Hanpu Li 李函璞

浣渓沙の調べ · 三日後、また別の家に泊まり、横になっても寝床に落ち着かない

詞

初稿

《浣溪沙 · 後三日,復宿他舍,臥不安席》

久餓鵷鶵練實空。他家聊借一枝桐。 醴泉何處可澆胸。 君奏咸韶娛海鳥,儂羅鼎俎饗飛鴻。 臠杯未舉目先濛。

浣渓沙の調べ · 三日後、また別の家に泊まり、横になっても寝床に落ち着かない

久しく飢えた鵷鶵、竹の実はもうない。 よその家で、ひとまず一枝の梧桐を借りている。 胸に注げる醴泉は、どこにあるのか。 あなたは咸韶を奏でて海鳥を楽しませ、 私は鼎と俎を並べて飛ぶ雁をもてなす。 肉にも杯にもまだ手をつけぬうちに、目が先にかすむ。
訓読・書き下し文

浣渓沙 · 後(のち)三日、復た他舎に宿り、臥(ふ)して席に安んぜず

久しく餓えたる鵷鶵(えんすう)、練実空し。他家に聊か一枝の桐を借る。 醴泉は何(いず)れの処にか胸に澆(そそ)ぐべき。 君は咸韶を奏して海鳥を娯(たの)しましめ、儂(われ)は鼎俎を羅(つら)ねて飛鴻を饗す。 臠杯未だ挙げざるに目先ず濛(かす)む。
  • 「鵷鶵」は鳳凰の類の鳥で、「えんすう」と読む。
  • 「澆」は、この書き下しでは注ぐ意で「そそぐ」と訓む。
  • 「儂」は一人称で、この書き下しでは「われ」と訓む。
  • 「羅」は、この書き下しでは並べる意で「つらぬ」と訓む。
  • 「濛」は、この書き下しでは目がかすむ意で「かすむ」と訓む。
訓点校注(編集)
  • 「鵷鶵(えんすう)」は『荘子』秋水篇の鳥。梧桐にしか止まらず、練実(竹の実)しか食べず、醴泉しか飲まない。
  • 「澆胸」は『世説新語』任誕篇で王大が阮籍を評した「胸中壘塊,故須酒澆之」による。
  • 過片は『荘子』至楽篇による。魯侯は海鳥を迎えて廟で酒をすすめ、九韶を奏し、太牢を供えたが、鳥は目がくらんで憂え悲しみ、一臠の肉もあえて食べず、一杯の酒もあえて飲まず、三日で死んだ。「咸韶」は咸池と九韶の楽。「儂」は一人称で、ここでは「われ」と訓む。